インドからの来客とスタールビー

2002-1-27

 インドからマルチャンが来ることになった。マルチャンはインドを旅行した時のガイドさんだ。カルカッターベナレスーアグラ−ジャイプール−デリーと案内してくれた。その時は車付きで客は我々2人だけ、とても安く豪華で快適な旅だった。マルチャンは仏教のPhd.を取ろうとしている学生でもあり、仏教の説明を詳しくしてくれた。マルチャンは日本人相手のツアーガイドもし、家業の宝石商も営んでいた。ガイドさんは不定期の仕事だから兼業している人が多い。マルチャンはバラモンのお坊ちゃんで、結婚した時は花嫁に金製品をどっさりプレゼントしたという、私よりずっと金持ちだ。インドでは貧しい人が多いが、貧富の差も大きい。マルチャンは2年前に日本に来たこと時8千円のうなぎを食べたと言った。私だってそんな高価なうなぎは食べたことがないのだが、マルチャンが日本で滞在する所がお坊さんなどお金持ちだからである。

 マルチャンはだいぶ前から、日本に来ると何度も電話をくれた。今回は仏教のリサーチがメインで広島、岐阜、別府など新幹線でお寺を回っていたという。日本国内を旅行するのは交通費がとても高い、新幹線も高くて私だってそんな贅沢な旅をしたことがない。マルチャンの1か月ほどの滞在中、外国からは安く新幹線周遊チケットを買ってきた、といっても3週間で10万円ほどだと。だからマルちゃんはおもいっきり移動しているのだ。マルチャンは知り合いのリストを作り、順番に回っているので忙しそうだった。

 東京に来る日待機して夕方やっと新幹線で到着することになった。迎えに行き、一緒に旅した前島さん夫婦と渋谷で和食の食事をした。その後宿が決まっていないし写真で見たレストランで食事する愛犬と両親にも会いたいということなので実家に連れて行くことになった。満員電車が初めてでびっくりしていた。これが日本の生活よ、日本人はインド人と比べて耐える生活をしないとさんざん言っていたマルチャンに、日本人は忍耐強いでしょうと自慢した。両親は男だったので最初びっくりしたようだったが、マルチャンにNPOのことを話したり、ビデオを見せた。マルチャンもNPOのインドの事情を教え、アドバイスしてくれた。翌朝荷物が重くて歩きたくないということで、父親が近くの相模原など車で案内してくれた。こんなところに展望台があるのと私も驚いた。

 インドでは生活にヒンズー教や仏教が密着している。IT技術者でも瞑想などして精神的なものを自然な形で受け入れているのだが、日本はそれがない。宗教関係者が一般市民より金持ちなのもおかしいし、政治やテロに関係し、偏見を持ちやすいのだろうと。

 マルチャンは2年前に日本に来たことがある。その時は日本はすべてが優れた憧れの国に思えたらしい。しかしこの2年間の変わり果てた日本に驚いたそうだ。特に若い人たち、原宿を歩いてカルチャ−ショックを受けたそうだ。インドでは乞食もストリートチュードレンも群がっているのに、なんと退廃しているのか。輝くアジアの星日本だった筈なのに、デフレやら不況の深刻さを外国人はより強く感じたようだ。至るところ治安が悪くなった話を聞くと。インドに比較すれば物価がとても高いことにも驚いていた。

 マルチャンはリサーチの他にちゃっかり宝石のビジネスもしようとインドの宝石をたくさん運んできた。しかし時間もなく、不況で思うように売れない。税金まで払ってたくさん持ってきて残れば又税金を払わなくてはならないのでとても困っていた。サラリーマン時代の昔の私なら喜んで飛びついたのだが、今の私にはネパールの子もいるし非常勤で収入も少ない。母にも見せたが、ちょうど先月隣の家に泥棒が入って旦那様の退職金で買った奥さんの高価な指輪をすべて盗まれた直後だったので、いらないと言った。たくさんの宝石の中でスタールビーの大きな指輪が際立って私を魅了した、高品質で日本なら高価なもの。欲しい、でも諦めよう、ごめんねといって別れた。

 夜マルチャンが二子玉川に来て友人たちを紹介し、NPOの事務所も案内した。マルチャンは困っているから買ってあげた方がいいと前島さんにも言われ、前島さんは孫に小さなルビーを買ってあげた。一目ぼれした大きなスタールビーの指輪を安くしてくれたので、よし協力しようと私は決断した。ルビーは私の誕生石でもある。ちょうど新しい仕事が入ってきたのでそれをすれば賄えそう、頑張ろう。似たようなデザインと色の小さな指輪をグアムで買ったのだが、これは人工的に固めたものだということがわかる。もっと大きな本物をおもいきって買うことになってしまった。

 そう、お金は回すのだ、今はサラリーマン時代より生活が苦しい、でもそれでより格安の物を買えば、実質的にはもっと豊かになるのだ。昔買った宝石よりずっと豪華だ。だから経済指標はお金の値だけで評価するのはおかしい、中身を考える時代になったとかみしめながら。先日従姉妹と話したばかりだ、子供さえいなければ宝石を買えるのに、子供がいなくても不況で買えない、所有したとしても泥棒に取られる、結局同じだと。でも突然こんな感じで思いがけずに手に入れることになってしまった。

 夜はお金をおろせない、ATMは24時間開いていてもいい筈なのにとマルチャンは不思議がったが、コンビニは時間外と表示され日本は外資系銀行しか開いていない、仕方なく渋谷まで出ることになった。マルチャンはありがとう、お礼にNPOに協力すると誓った、マルチャンの故郷ラージヒルに学校を作りたいからね、それも可能だから見て検討した方がいいと。最終列車で遠くの友人宅に向って別れを告げた。さー私の夢は実現するかな、楽しみ!